三重映画フェスティバル実行委員会の協力によりお送りしている「三重映画さんぽ」
今回は、今年の夏に『望郷の小津安二郎』を出版された伊勢市在住の登重樹さんです。
小津安二郎は三重県ゆかりの世界的に有名な映画監督ですが、
登さんは1980年代はじめに興味を持ち、
折に触れ、小津安二郎に関する情報を聞いたり、調べたりしていました。
また映画が好きで、学生の頃は年間200本ぐらい映画館で見ていましたが、
仕事をするとなかなか映画館で映画が見られない。
一定期間、映画と向き合う時間が取りたい。
そこで50代に一念発起して、
早稲田大学大学院に入り「映画学」を専攻されました。
修士論文では小津安二郎を選び、
折に触れて現地を訪ね、
これまでどの文献にも書かれていないことを発見し、それを調べ、まとめました。
踏切のシーンが多い理由や
戦後の小津映画に関西弁をしゃべる人物が登場する理由など・・・。
小津安二郎についての研究者は多くいますが、
そのほとんどが東京からの視点で、
小津が若い時に暮らした地方の視点に注目したことは登さんならではです。
もとは修士論文でしたが、教授陣から高い評価を受け、
『望郷の小津安二郎』として単行本化・出版されることになりました。
書籍化にあたっては、広く一般読者も念頭に、全篇にわたって加筆修正し、
小津の少年期から晩年までを通観できる評伝形式となっています。
具体的には、小津安二郎の少年期の松阪への転居、
青年期の関東大震災との遭遇、
壮年期の中国戦線への出征など、
故郷・東京を離れ、あるいは喪失する体験を幾度となく繰り返した小津が、
その深い喪失感と強い望郷の念をバネに、
いかに数多くの表現・描写を作品の中に結実させていったかについて、
彼自身の日記・手紙・発言や友人・親族の証言などを基に、
実証的に解き明かしていきます。
小津監督のご遺族から
「小津の生涯と作品を充実した内容で、しかもわかりやすく書いてくれた。感謝します」と
コメントもいただいたほどです。
登重樹さん著 『望郷の小津安二郎』は全国の書店、大手通販サイトなどでご注文いただけます。
山上和美でした♪