三重映画さんぽ「日本映画を歴史的音源で聞く」

三重映画フェスティバル実行委員会のご協力によりお送りしている「三重映画さんぽ」のコーナー、今回は、三重映画フェスティバル実行委員会事務局長の田中忍さんに「日本映画を歴史的音源で聞く」というテーマでお話いただきました。

8月映画 田中さん.JPG

※田中さんが手にしているのが「SPレコード」です

 

「歴史的音源」って何?

明治の終わりから大正、昭和にかけて、演説や音楽を記録・保存する手段として、SPレコードや金属原盤などが利用されていたのです。しかし時が経つにつれ、これらの音源が劣化したり散逸するなど、音の喪失が危ぶまれ、2007年に日本レコード協会はじめNHK、日本音楽著作権協会など計6団体が、これらの歴史的に貴重な音を永く残していこうと、組織を作ったのです。そして、1900年初めから1950年頃までに国内で製造されたSPレコードや原盤等、約5万件の音源のデジタル化を行いました。国立国会図書館ではこの音源を、申請のあった国内外の公立図書館等に配信していて、無料で聞く事が出来るんです。

歴史的に貴重な音源が、時代を越えて現代に蘇ります。

落語、歌、演説、そして映画劇などなどいろいろな音を聞く事が出来ます。例えば、3代目柳家小さんの「落語 うどん」や、藤山一郎が歌う「丘を越えて」、尾崎行雄や東條英機の演説、そして林長二郎・田中絹代出演による「金色夜叉」などがあります。

映画の「金色夜叉」は林長二郎、田中絹代が出演した作品で、レコードの発売と同じ年、昭和7年に公開されたものですが、実はサイレント映画でした。つまり、映画に出演している俳優の声は聞こえず、活動弁士が映画のストーリーを話すとともに、男役、女役の声を使いわけ語っていました。それで、映画とは別にレコード用に、主演の二人はセリフを吹き込んだのです。また音楽、寺の鐘、波の音なども吹き込まれ、上下巻合わせ6分程度収録されていて、映画を見ているような気分になります。

当時は、現代のようにビデオやDVDなどありません。好きな俳優の声を自分のものにしたいという人々の要求に応えるために、「映画劇」と言われるジャンルのレコードが発売されました。その他、活動弁士が、サイレント映画を上映しているかのように、映画のストーリーや俳優の声を語る「丹下左膳」「愛染かつら」などの音源もあります。

こういった音源は、三重県内では皇學館大学附属図書館が県内で早々に導入し、まもなく1年経ちます。続いて、三重県立図書館も今年の初めに導入されました。どちらも利用の際には、運転免許証等の本人確認や図書貸出カードなどが必要です。事前にホームページやお電話でお問い合わせください。

 

山上和美でした♪