普段、忙しくて、なかなかまとまった時間が取れないという方、
年末年始の休みの時に本を読んでみませんか?
今年を振り返り、新年への鋭気を養っていただけるよう、
お勧めの本をご紹介します。
ご紹介してくださるのは、
日本図書館協会 認定 司書で
勢和図書館 司書の 林千智さんです。
林さんは「共感」をテーマに本を選んでくれました。
ノーベル文学賞を受賞したカズオイシグロ氏の演説論旨にあった
不寛容という時代にどう「共感」していくかに焦点を当てたのです。
番組でご紹介したのは2冊。
『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』
帚木蓬生 著 / 朝日選書
「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、
事実や理由をせっかちに求めるのではなく、
不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力のことを言うそうです。
世の中にはどうにもならない、
答えがなかなか出せない事態が多くありますが、
性急に答えを出すのではなく
その中で耐え抜きながら新たなことを見つけ出していく、
耐え抜いていく力が大事であると。
不寛容の時代と言われ、
面倒だということで、暴力や戦争に訴えることは
ネガティブ・ケイパビリティとはまったく逆の事。
そこを耐え抜いて、どうしていくのかというのが大事です。
このような内容ですが、決して難い本ではなく、
物語のように読みやすい本です。
他にも、帚木蓬生さんの『天に星 地に花』もオススメです。
『命の意味 命のしるし』
上橋 菜穂子、齊藤 慶輔 著 / 講談社
『獣の奏者』『精霊の守り人』などを書かれている上橋菜穂子さんと、
猛禽類専門の医師・齋藤慶輔さんの対談。
違う観点の方々ですが、言っていることは同じです。
声を発しない猛禽類に関わる齋藤さんと、
アボリジニの研究をされてきた上橋さんは、
声なき声に耳を澄ます、小さき声の側にいらした方です。
今、世の中におこっていることとリンクして、
心に響く言葉がたくさん書かれています。
番組ではご紹介しきれなかったおススメ本
『ミトン』
文 小川糸 / 画 平澤まりこ / 白泉社
ミトンのとてもかわいい編み込み模様が表紙になった本です。
バルト三国のラトビアを舞台にした創作の物語。
お嫁に行く時、自分で編んだミトンをたくさん持っていくそうですが、
ミトンの模様にはそれぞれ意味があるそうです。
自然から頂いた恵みに感謝しながら生きる人々の暮らしは、
大国ロシアのもとにあって、規制も多くありましたが、
大きい声をあげるのではなく、
地道に、大事に守り続けたことで、
自分たちの文化を守り続けることができました。
小さなことを大事にしていけたらいい、
心がほっこりする一冊です。
日々の暮らしの中で自分に重ね合わせ、
新たな考え方の視点を得ることができたり、
風穴を開けるきっかけなれば・・・。
それができるのが「文学」の力、
そして「言葉」の力なのかもしれません。
山上和美でした♪